遊心庵(旧田中家住宅) ゆうしんあん(きゅうたなかけじゅうたく)
員数 | 2棟 |
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構成要素 | 主屋(しゅおく)、門及び塀 |
地域 | 日高地域 |
所在地 | 日高郡美浜町三尾837 |
時代 | 昭和前期 |
指定年月日 | 平成31年3月29日登録 |
指定等区分 | 国登録 |
文化財分類 | 有形文化財(建造物) |
所有者 | 美浜町 |
解説
日高郡美浜町三尾に所在する。三尾出身の田中松蔵により建設された。松蔵は、カナダにおいて鮭漁で成功した人物で、昭和8年(1933年)、故郷である三尾に敷地を取得し、程なく住宅を建築したという。施工は近隣の産湯(日高町産湯)の大工棟梁と伝えられる。
昭和48年(1973年)に田中家の所有を離れ、その後、数度の所有者変更を経て平成28年(2016年)に前所有者が取得し、さらに美浜町によりゲストハウスとして整備された。現在は美浜町所有である。
敷地は三尾地区中心部の高台に位置し、東西に長く、南側に石垣を築いて造成し、中央に主屋を建てる。
主屋は南面し、木造、平屋建、瓦葺で、東西18.1メートル、南北15.2メートル、建築面積は214平方メートルである。正面東端を前方に突出させ、西側には別棟が接続する。内部は玄関より東側を土間とし、西側を床上(ゆかうえ)部として座敷を設ける。別棟は洋風の応接間で、外観も下見板(したみいた)を張るなど洋風の意匠とする。内部・外観ともに落ち着いた和風意匠を基調とするが、一部に洋風を取り入れている点に特徴がある。
門及び塀は、敷地正面の石垣上に建ち、延長20.4メートル、門の間口は2.4メートルである。コンクリート造のモルタル洗出し仕上げとし、主屋と同時期の建設と見られる。伝統的な屋敷構えに近代的な彩りを添える。
カナダへの移民の歴史で知られる三尾地区において昭和戦前期までに建築された住宅のうち、規模が大きく上質で、保存状態も良好な事例として貴重である。洋風意匠の導入も一部に見られ、歴史的景観に寄与するとともに、当地区の民家の歴史を考える上でも重要な建物である。