山﨑家住宅 やまさきけじゅうたく
員数 | 4棟 |
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構成要素 | 主屋(おもや)、南蔵(みなみぐら)、北蔵(きたぐら)、塀 |
地域 | 那賀地域 |
所在地 | 紀の川市粉河853-3 |
時代 | 大正時代 |
指定年月日 | 令和3年2月4日登録 |
指定等区分 | 国登録 |
文化財分類 | 有形文化財(建造物) |
所有者 | 個人 |
解説
山﨑家は和歌山市内で綿ネル業を経営した家である。JR粉河(こかわ)駅のすぐ北側に広い屋敷を構え、街路に面し中央東寄りに門を構え、その他は煉瓦造の塀を巡らす。主屋を敷地中央に建て、街路に面して南蔵、敷地の背面側に北蔵を建てる。現在は社会福祉法人によってカフェやイベント会場として活用されている。
主屋は大正6年(1917年)5月30日に上棟した。施主は山﨑栄助である。大工は和歌山市と高野山の大工が関わったことが、上棟の際の棟札に記されている。入母屋造、2階建、瓦葺で、東の大広間部は平屋建となる。2階建部分の南側に玄関があり、北に次の間6畳と、床の間・違い棚を備えた8畳の座敷が続く。東に折れると大広間がある。
大広間は15畳の座敷と10畳敷の仏間から構成されている。大広間は極めて豪華な造りで、一間半の床の間に違い棚や付書院などの座敷飾りを備え、壁は金唐紙を貼っている。また、天井は折上格天井(おりあげごうてんじょう)である。
南西の勝手口から通り土間を進むと台所がある。台所の東には、階段室がありここから2階へ上がる。階段や手すりは直線を基調とした洋風意匠で、壁には丸窓を開き、天井は格天井とする。2階は、東側に10畳の主座敷2間があり、それぞれ次の間が備わる。北西の8畳は、天井を傘形に張る。この傘天井は竿縁をあたかも傘の骨のように放射状に配置した特徴あるものである。
南蔵は土蔵造2階建、瓦葺の重厚な土蔵で、建ちも高く、屋敷景観の要となる。また北蔵は、土蔵造2階建、瓦葺で、1階は3室に分けるが、2階は広い1室とする。北蔵は上棟式の幣串が残り、大正7年(1918年)に建設されたことが知られる。
和歌山の代表的な近代産業である紀州ネルに関わる商工業によって財力を蓄えた経済人の住まいとして、地域性や時代を反映した建築であり、特に主屋内部は、伝統意匠をベースに形式にとらわれない質の高い意匠が随所に見られ、加えて洋風も導入するなど、近代和風建築としての特色を備える。また、目の詰んだ檜(ひのき)の良材を多用しているのも特筆できる。敷地全体においても大正時代の屋敷構えがよく残る。