旧制和歌山中学校(桐蔭高等学校) きゅうせいわかやまちゅうがっこう(とういんこうとうがっこう)
員数 | 2棟 |
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構成要素 | 図書館(同窓会館)、運動場スタンド |
地域 | 海草地域 |
所在地 | 和歌山市吹上五丁目1-17 |
時代 | 大正11年,昭和4年 |
指定年月日 | 令和3年2月4日登録 |
指定等区分 | 国登録 |
文化財分類 | 有形文化財(建造物) |
所有者 | 和歌山県 |
解説
旧制和歌山中学校は明治12年(1879年)に最初の県立中学校として真砂丁(まさごちょう)に開校した。その後移転を経て、大正4年(1915年)に現在地に校舎を新築した。戦後は、県立の旧制和歌山高等女学校とともに、昭和23年(1948年)に新制高等学校である桐蔭高等学校となり、現在に至っている。
図書館(同窓会館)は、昭和4年(1929年)に開校50周年の記念事業として保護者の寄付金で建てられた。鉄筋コンクリート造、平屋建、陸(ろく)屋根の建築で、当時敷地の北側にあった正門を入ってすぐ東に西面して建つ。設計者、施工者は資料が無く不明である。昭和53年(1978年)に閲覧室後方の書庫を撤去し、同窓会館として改修されたが、旧閲覧室部の外観は旧態をよく残す。正面玄関ポーチには太い円柱や手摺りを置いて重厚な意匠とすると同時に、庇下の蛇腹や正面壁面中央に飾られた旧制中学校校章によって、水平線を強調している。側面は外部は連続縦型窓を配し、奥行きを強調しており、モダンな意匠の近代建築である。細部は和歌山中学校の「中」をモチーフにした床下換気グリルに至るまで工夫が見られる。
運動場スタンドは、敷地背後の丘陵斜面を活かしたコンクリート製の観客席で、校地東半を占める運動場の北辺と東辺に設けられた。大正11年(1922年)に全国中等学校優勝野球大会での2年連続優勝を果たした直後、和歌山県や和歌山市、また有志からの寄付金によって建設された。竣工後に皇太子(後の昭和天皇)が行啓され、初めて野球観戦をされたとの記録が残る。北翼部は長さ約52メートルで、西側11段、東側10段、長さ約112メートルの東翼部は12段から成る。最上段に設けられた塀は当初コンクリート柱に鉄線張りであったが、現在はコンクリートブロック造である。塀のほか、客席の細部において外観上の変更が見られるものの、スタンド全体の構成としては当初の様子をよく残し、今なお同校の運動場スタンドとして現役で使用されている。同窓会館とあわせ、和歌山県下の名門旧制中学校の歴史を物語る貴重な遺構である。