新宮の速玉祭・御燈祭り しんぐうのはやたまさい・おとうまつり
地域 | 東牟婁地域 |
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所在地 | 新宮市新宮、神倉 |
指定年月日 | 平成28年3月2日指定 |
指定等区分 | 国指定 |
文化財分類 | 無形⺠俗⽂化財 |
所有者 | 熊野速玉大社祭事保存会 |
解説
熊野三山の一つである熊野速玉大社を中心に、地域を挙げて行われる大規模な祭礼行事である。速玉大社の祭事は、そもそも新宮本願・神倉本願といい、二者一体の信仰体制を備えていたことから多様な祭りが併存しており、前者の代表的な祭礼が「速玉祭」で、後者のそれが「御燈祭り」に当たる。
速玉祭は、10月15日に阿須賀神社で神馬(しんめ)の渡御(とぎょ)があり、御神霊を神馬に戴(いただ)き、速玉大社から御旅所(おたびしょ)までを行列して巡る。そして翌16日には神輿の渡御と御船(みふね)祭りがある。「一つ物」という稚児人形を載せた神馬を先頭に、神輿が出発して町内を巡った後、御神霊は神輿から船に遷(うつ)され、斎主船(さいしゅせん)、諸手船(もろたぶね)とともに熊野川を遡上し、御船島へと向かう。御船島では9艘の小船による早舟競漕(きょうそう)が行われ、終わると神霊は陸に上がって御旅所へと入り、所定の儀式があって還御(かんぎょ)となる。
2月6日の夜に行われる御燈祭りは、神倉山(かみくらやま)の山上にある神倉神社の祭礼である。「上がり子」と称する祈願者が手に松明を持ち、精進潔斎を示す白装束の姿で山を登り、宵闇の中、境内に群れ集まる。やがてゴトビキ岩の陰で御神火(ごしんか)が起こされ、迎火大松明(げいかおおたいまつ)に火が移される。大松明はいったん下山し再び上ってくると、人びとはその火を一斉に分かち始める。やがて辺り一面は火の海のようになるが、頃合いを見計らって山門が開けられると、上がり子たちは一気に山を駆け下りていく。翌日は、御礼参りの日で、神倉山の麓で大護摩供や火渡り、餅撒きなどがある。
新宮の速玉祭・御燈祭りは、いずれも自然崇拝的な性格が強く認められるとともに、神々の事蹟を辿る他に類例のない大規模祭礼であり、我が国の民間信仰や祭礼行事のあり方を理解する上で重要である。