畑田家住宅 はただけじゅうたく
員数 | 2棟 |
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構成要素 | 主屋(しゅおく)、門及び塀 |
地域 | 海草地域 |
所在地 | 海南市船尾215-67 |
時代 | 昭和4年頃 |
指定年月日 | 平成31年3月29日登録 |
指定等区分 | 国登録 |
文化財分類 | 有形文化財(建造物) |
所有者 | 個人 |
解説
海南市船尾(ふのお)に所在する近代の住宅である。船尾は漆器生産で有名な黒江に南隣しており、当初は黒江に所在する木下重兵衛家の新宅(分家)として昭和4年(1929年)に建設された。木下重兵衛家は黒江の有力な漆器問屋で、船尾に構えられたその新宅も、また漆器問屋を営み、遠来の顧客を主屋に逗留(とうりゅう)させたこともあったという。近年、畑田家が取得し、現在に至っている。
主屋は木造、2階建、入母屋造、桟瓦葺の建築である。外観は建ちが高く、1階は真壁(しんかべ)造、黒漆喰塗、2階は大壁造、黒漆喰塗で三筋の定規筋を付けた重厚な外観である。1階は出格子を構え、格子まわりには檜(ひのき)の良材が用いられている。2階の大屋根の軒は出桁造とし、丸桟瓦(まるざんがわら)で葺き、屋根には緩いむくりが付けられている。丸桟瓦は通常より高価な瓦であることから、力の入った普請であることが外部からも窺える。
入口を入ると土間があり、土間に開放されたミセがある。かつてここは漆器問屋の帳場(ちょうば)として使用された。大黒柱を挟んで階段室があり、土間から玄関として使えるように造る。
2階は正面南側に10畳の座敷を構える。床の間まわりは時代からすると、過度に装飾せず、抑制の効いた端正な意匠の座敷である。床の間は間口1間で、床框(とこがまち)は漆塗りとする。床柱は杉の絞り丸太とする。床脇もまた1間で、違い棚、天袋を設え、漆塗りで仕上げる。2階の下手2室は長押を打たないが、檜の良材が駆使されている。また、各建具には建設当時のガラスが良く残る。
門及び塀は、共に鉄筋コンクリート造である。北東に門柱を建て、黄色のモルタルを用いた洗い出し仕上げである。塀は基礎が花崗岩切石仕上げ、壁はモルタル仕上げ、笠木部は繰形を付けた洗い出し仕上げとする。
1階の出格子窓や2階の黒漆喰塗の大壁造が正面意匠を引き締め、内部は檜の良材を駆使した造りとなる。近代住宅地の歴史的景観の核となる良質な近代和風住宅である。