北山家住宅主屋 きたやまけじゅうたくおもや
員数 | 1棟 |
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地域 | 海草地域 |
所在地 | 和歌山市和歌浦南二丁目2-18 |
時代 | 昭和前期 |
指定年月日 | 令和2年8月17日登録 |
指定等区分 | 国登録 |
文化財分類 | 有形文化財(建造物) |
所有者 | 個人 |
解説
和歌山市和歌浦南に所在する近代の住宅である。和歌浦南は片男波(かたおなみ)の砂州に向かって形成された住宅街で、北側には商店街である明光(めいこう)通りがつながる。和歌浦は古来より景勝地として知られていたが、近代には関西の別荘地・行楽地として発展した。以降、昭和前期にかけて新和歌浦の開発もあり、多くの人々が和歌浦を訪れ賑わった。
この住宅は、大谷家の住宅として昭和前期に建設された。大谷家は水産加工業を営み、明光通りで販売する押寿司を作っていたという。昭和前期に家業は成功を収め、当時千両普請といわれるこの住宅を建設した。
住宅は和歌浦南の住宅地を北西から南東へ抜ける通りの角地に、北西面させて屋敷を構える。主屋は通りに面して北西面して建ち、その西側には駐車場があり、屋敷内南東には庭園が造られている。
主屋は木造2階建、入母屋造、瓦葺の建築である。外観は建ちが高く、1階は真壁(しんかべ)造、漆喰塗、2階はサイディングを張った大壁造であるが、かつては漆喰塗であった。1階正面は出格子を構えている。出格子まわりは、檜(ひのき)の良材が用いられている。1階は庇を出桁造とし、一文字瓦で葺く。2階の大屋根の軒は出桁造とはせず、瓦で葺き、屋根には緩いむくりが付けられている。
1階各室は大引天井とした実用的な部屋であるが、2階には良材を用いた8畳の座敷を構える。床の間まわりは端正な意匠で、床框は黒柿、床柱は杉の磨き丸太とする。床脇には、違い棚、天袋を設えている。檜の良材が駆使され、長押(なげし)を打ち、天井は二重回り縁とし、竿縁は猿頬面(さるぼうめん)を取る。天井板は杉の笹杢板を張る。
建築年代は不明であるが、90年程前の建設と伝わる。良材を用いた質の高い近代和風の住宅で、外観は過度な装飾要素はないものの、1階の出格子窓や一文字瓦の庇が正面意匠を引き締め、和歌浦南の歴史的景観の形成に寄与している。